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地下鉄延伸路線 ランシメトロ

フィンランド最大級のインフラプロジェクト

ランシメトロは、ヘルシンキ市と西隣のエスポー市を結ぶ地下鉄路線です。この巨大プロジェクトには、地下水排水用のポンプ場施設、乗り換え施設、30km以上に渡って平行するトンネルの工事が含まれます。個々の独自性を持つ8つの新駅(150,000㎡=東京ドーム約3.2個分)の建設により、乗客が地下鉄を利用して移動できるようになりました。最終予算は10億ユーロ超える規模のプロジェクトです。

この大規模なプロジェクトを実現するため、エンジニアリング会社であるA-Insinöörit 社は2009年から設計に着手していました。建設規模の大きさもさることながら、固い岩盤の中で線路の新設工事を行い、さらに大部分が海面下という厳しい環境の中での作業となるため、非常に難易度の高いプロジェクトとなりました。様々な側面を持つ地下駅の建設を管理するためにBIMが必要であることは、当初から明らかでした。意匠設計や設備設計には複数のCADが使用されましたが、構造設計は全面的にTekla Structuresが採用されました。

    

複合な建物

構造モデリングでは、建築の複雑さ、難易度の高さ、かつ大規模な構造の両方を考慮する必要がありました。すべての構造物を岩盤に固定するために、岩の割れ目や岩盤の強度など岩盤の形状や種類などすべてが重要な検討事項となります。この地盤環境は構造的にも非常に厳しく、ランシメトロの建設基準と欧州構造基準(ユーロコード)の両方の要件を満たすために、構造詳細設計のための最先端のソリューションが求められました。

本プロジェクトにおける構造とモデリングの成功例として、コイヴサーリ駅の木製母屋が挙げられます。基本設計の段階で複数のソフトウェアを使用してさまざまなモデルを作成し、検証作業を行いました。Rhinocerosで作成された曲面状の屋根の合板のサーフェイスモデルは、初期データとしてIFC形式で梁の位置をTeklaモデルにインポートし、サーフェイスモデルを作成し、正確な製作図面を作成しました。また、AutoCADのモデルから取り出した仕上寸法のデータを参照して、合板切断用の正確なデータも作成できました。。これらの手法を採用することで、他の方法では実現できなかった曲線を描く正確な部材の図面作成を実現しています。

その後、テクラでモデル化された木造構造の屋根は建設現場でも使用されました。Rhinoceros からインポートされた屋根の母屋は、Rhinocerosで定義された曲線を持つTeklaの部材に変換され、Rhinocerosに含まれる位置情報は、Teklaをモデリングするうえで役立ちました。

新しいモデリングツール

本プロジェクトでは、モデリング作業を効率化するために既存のTeklaコンポーネントが数多く活用されましたが、プロジェクト規模と特殊な状況から、新しいツールも必要とされました。例えば、シャフトや駅のプレキャストコンクリートの詳細設計では、補助サポート(架設資材)の留め具を作成するための新しいコンポーネンが作成され効率化に役立ちました。

擁壁部材をモデリングするために、大規模なツールセットを作成しました。効率を上げるために、鉄道線路上の擁壁部材と排水溝がコンポーネントとして作成されました。数キロメートルに及ぶ擁壁部材の間に必要となる5mmの隙間(目地)のモデリングには擁壁ツールを活用しました。擁壁ツールは、特定の線路上に擁壁部材を自動的に配置します。その後、選択した擁壁部材の座標点を自動的に作成するモデルポイントツールを作成し、部材座標のレポート作成にも役立っています。

多岐にわたるモデル活用

BIMは様々な場面で有効に活用されています。様々なレベルで交差する複雑な構造の組み合わせや、他の設計者が作成した設計データをモデルの取り込むことで、その設計を理解することができるため、設計者はBIMの大きな恩恵を受けています。

岩盤表面の3Dデータをモデルに取り込み参照データとしました。岩盤の形状に関する包括的なデータを活用することで、構造物を岩盤の地形に合わせた製作が可能となり、コンクリートや鉄骨の量をより正確に見積もることができ、構造物を岩盤に固定するための設計が容易になりました。また、凹凸のある岩盤を様々な図面に表現することは難しい作業ですが、岩盤の参照モデルを活用することで図面作成時にも役立てられました。

設計者や現場だけではなく、モデル情報は、ランシメトロ社向けに設計のデモンストレーションを行う際にも利用されました。ヘルシンキの建築当局向けのウッタサーリ駅とコイヴサーリ駅建設のプレゼンテーションは、BIMのみを用いて行われました。プレキャストコンクリートの詳細設計のモデルデータは、生産計画や生産管理システムでも利用されました。

TeklaのBIMモデルは総合建設業者の生産計画や管理にも利用されました。現場では、複雑な構造物や鉄筋の視覚化や検査などにBIMモデルが活用され、専門工事業者の入札時には、モデル内の数量情報が使用されました。いくつかの現場では、モデルベースの工程計画と進捗管理を行いました。

現場打ちコンクリート打設業者や型枠工事業者でもBIMは活用されています。また、タピオラ駅の工事を請け負ったファブリケーターは、自社で設計した鉄骨構造モデルと岩盤のモデルを統合することで、製作する部材の正確な形状の把握が可能となり、工場製作での効率化を実現しています。

プロジェクト参加企業

構造設計・プレキャストコンクリート詳細設計:A-Insinöörit Suunnittelu社

プレキャストコンクリート詳細設計:Ramboll Finland社

意匠設計(オタニエミ駅、ケイラニエミ駅):Arkkitehtitoimisto ALA社

意匠設計(コイヴサーリ駅、ラウッタサーリ駅):Arkkitehtitoimisto Pekka Helin & Co社

意匠設計(マティンキュラ駅、運動公園駅、ニーッテュクンプ駅):Arkkitehtitoimisto HKP社

設備設計:Granlund社